日本人の生活に根付いた六曜
2019-09-30
日本の文化・慣習
「今日は大安だから結婚式が多い」
「今日は仏滅だから気を付けないと」
あなたはそんな言葉を耳にしたことはありませんか?
また、カレンダーの日付の数字の下に「大安」「仏滅」「友引」と書き込んであるのを見たことのある人もいるでしょう。
これは、もともと時刻の吉凶占いに用いられたもので、「六曜星」または「六曜」と言います。
日本人の中でも六曜を気にする人もいれば、特に若い人を中心に、「六曜なんて迷信」と考える人もいます。また、政府や自治体の行う公共建築の地鎮祭などの行事でも、六曜を元に日程が決められところが多いようです。
日本人の生活に深く根を下ろした六曜の意味や、なぜ今も伝えられているのか、どうして気にする人がいるのかを紹介します。
■六曜とは何か、その起源と歴史
■六曜とは
六曜とは、14世紀ごろ中国から伝わってきた占いの一種です。六曜はその日が運の良い日か運の悪い日かを、人々に知らせるものでした。「仏滅」(※仏も滅ぶという意味)という言葉があることから、仏教から来ていると思うかもしれませんが、もともとは「物滅(※あらゆるものが滅ぶ)」という意味で、仏教的な背景のあるものではありません。
旧暦(太陽太陰暦)の1月1日が「先勝」と決まっていて、それから「友引」「先負」「仏滅」「大安」「赤口」、「赤口」の次はまた先勝に戻り、順に繰り返されていきます。ただ、太陽太陰暦と現在の太陽暦の誤差によって、順番がずれているところもあります。
■六曜それぞれの意味
六曜には、以下のような意味があります。
●先勝(せんしょう、さきがち):午前中は吉、午後は凶、先んずれば勝ち
●友引(ともびき):朝晩は吉。昼だけ凶、凶事に友を引く。勝ち負けなき日
●先負(せんぷ、さきまけ):午前中は凶、午後は吉。先んずれば負け
●仏滅(ぶつめつ):仏も滅亡するという最悪の日
●大安(たいあん):万事に吉。成功せざることなき日。大変めでたい日
●赤口(しゃっこう):午の刻(午前11時から午後1時まで)のみ吉。祝い事大凶。
ただ、カレンダーには書いてあっても、現代では多くの日本人、特に若い世代を中心に、それぞれの日の意味を知っている人は多くありません。また、「先勝」や「先負」などの日は、ほとんど誰も気にしていません。しかし、今なお日本人の生活に、深く結びついている日があります。つぎの項では、実際にどのような形で影響を及ぼしているかを説明します。
■今なお影響力を持つ大安や仏滅、友引
■ものごとを始めるのに最適な大安の日
六曜の中で最も影響力の高いのが「大安」です。おめでたいというだけでなく、この日に始めるとこの後もずっとうまくいく、という意味もあることから、多くの人は結婚式をこの日に挙げます。そのため結婚式場は大安から予約が埋まっていきます。
その他にも、家を建てる工事の着工を行う日や、出来上がった家に入る日、購入した車を引き渡してもらう日などもこの日が好まれます。
また、ビジネスの場でも、会社の設立を申請したり、新規開店したり、新製品のローンチを行ったりするのも大安を選ぶところが多く、政府や自治体の行う公共建築の地鎮祭でも大安が選ばれることが多いのです。
■葬式以外は避けられる日、仏滅
仏滅は、六曜のなかでも大凶とされる日です。結婚式や転居、会社の設立なども避ける人が多く、結婚式場ではこの日に結婚式を挙げる場合は割引料金を適用するところもあるようです。
しかし、祝い事ではない葬式はこの日にやっても良いとされています。
また、全てが滅んだ後に新しいことが始まるのだから、新しいことを始めるのにふさわしい日、と考える人もいます。
■葬式は避けられる友引
友引は吉凶に関係ない日であるため、あまり気にされる日ではありません。しかし、例外がひとつあります。それは、葬式です。「友引」という言葉は「友を引く」と書くところから、この日に葬式を行うと、友達が(死者に)引かれていく、と捉えられ、多くの人が避けるのです。
逆に、結婚のようにめでたいことに「友を引く」のは良いことと考えられ、結婚式には大安に次いで友引は人気のある日です。
■結婚式は避けられる赤口
仏滅とならんで祝い事、特に結婚式が避けられるのが、赤口です。赤口の「赤」が、火や血を連想させることから、火と刃物に気を付ける日ともされています。そのほかにも、契約や訴訟は避けた方が良いとされていて、婚姻届を出すのも、この日は避けた方が良いと考えられています。
赤口は陰陽道で恐ろしい羅刹神が支配する「赤舌日」に由来する言葉です。そこから転じて不吉な日と考えられています。ところが「仏滅」のようにひと目で縁起が悪いとわかる言葉でないために、現代ではその意味を理解していない人も多いのです。六曜のなかでも大凶の日とされる赤口ですが、多くの人が「縁起の悪い日」として思い起こすのは、仏滅の日であることが多く、結婚式以外では、特に気にする人を除けば、それほど問題にされていません。
■大安や仏滅を気にする? 気にしない?
結婚情報誌『ゼクシィ』が2016年に行った統計によると、挙式日に六曜を「重視した」と答えた人が37.6%だったのに対し、「重視しなかった」と答えた人は52.6%に上ったことがわかっています。
気にしない人も増えている中、それでも結婚式場の予約が大安や友引から埋まってしまうのは、なぜなのでしょうか。それは、日本人の考え方の傾向として、「配慮」、つまり、それで不快な思いをする人がいないように気を付ける、ということがあるからではないでしょうか。「たとえ自分たちは仏滅など気にしなくても、そのことを気にする人がいるといけないから、慣例にならおう」という配慮があるためと。
六曜の考え方は、鎌倉時代の僧侶であり文人だった兼好法師も「吉日に悪をなすに必ず凶なり。悪日に善をおこなふに必ず吉なり」(良い日でも悪いことを行えば、かならず悪い目に遭う。悪い日でも良いことを行えば、かならず良い結果となる)と「徒然草」の中でも言っていて、迷信だと退けています。また、僧侶の方も、六曜は仏教とは無縁のものとして、気にすることはありません。
気にする人もいれば、気にしない人もいる。日常はほとんど気にも留めないけれども、結婚式や葬式など、特別のことがあるときだけは、カレンダーを見てその日が何にあたるかを確認する、というのが、日本人と六曜の付き合い方だと言えるでしょう。