お正月に『おせち』食べますか?意外と知らない『おせち』の意味
2019-09-20
日本の料理・食べ物
重詰めのおせちが食卓に並ぶと一気にお正月気分が盛り上がりますが、そもそもおせち料理というのはどうして始まったのでしょう。縁起物だという認識はありますが、そもそもなぜありがたい食べ物なのか、あまりよく知らない人がほとんどではないでしょうか。今日は日本に古来から伝わるおせち料理について、説明したいと思います。
1.「おせち」の意味
今ではおせちと言えばお正月に食べる料理を誰もが思い浮かべますが、もともとおせちには節句という意味があります。節句とは、簡単に言うと『節目の日』のことです。昔から日本人は季節と季節の変わり目を大切にし、無病息災、豊作、子孫繁栄などを願い、お供え物や邪気を祓う行事を行ってきました。その際に神様に供えた食物がおせち料理の始まりです。桃の節句や七夕など年に5回ある節句のうち新年が最も重要だとして正月のおせち料理だけが残り、現在の形になっています。
2. おせちの決まりごと
一般的におせち料理は重箱に詰めます。重箱を重ねることで幸福が重なるようにという願いが込められています。色々な段数のものがありますが、正式には四段です。それぞれ入れるものが決まっており、そのひとつひとつに大切な意味があります。
3. 代表的なおせちの種類
お正月の三が日に少しずつ食べるので火が入れてあり、味付けが濃く、日持ちのするものが主流です。
3-1. 数の子
ニシンの腹子である数の子は卵の数が多いことから子孫繁栄の意味が込められています。
3-2. 黒豆
黒く日焼けするほど勤勉に働けるようにとの願いが込められています。
3-3. 田作り
片口鰯の稚魚の干物を飴炊きにしたものです。かつて鰯を刻んだものを灰とまぜて畑の肥料として使い豊作になったことから、豊作祈願の意味があります。
3-4. かまぼこ
赤は魔除け、白は清浄の意味があります。
また、かまぼこの形は地平線から顔を出す朝日の形に似ていることから初日の出を連想させ、新年にふさわしい食材とされています。
3-5. きんとん
鮮やかな黄色が黄金を連想させ、金運を運んでくると信じられています。
3-6. 海老の煮物
調理すると腰の曲がることから、お年寄りまで生きられるようにと長寿祈願の意味があります。
3-7. れんこん
仏様のいる池にはハスの花が咲いているとされ、縁起の良いものです。さらに、穴が開いていることから、先が見通せる一年になりますようにという意味も込められています。
3-8. 鯛
「めでたい」という言葉の中に鯛がふくまれることから、縁起物とされています。見た目も美しく、味も良いため、おせちにかかわらず日本のめでたい席にはよく登場する食材です。
4.伝統的なおせちの衰退と最近のトレンド
近年おせちをお正月に食べる人が減ってきています。古風な味付けで若者にあまり人気がないこと、そして外食産業が充実して、女性の社会進出、晩婚化や未婚率が増えた結果、自炊率が減ったことなどが主な原因です。
手作りのおせちが減少していく一方で、市販のおせちは売り上げを伸ばしています。1990年代に既婚女性の多数派が共働きになるのと同時に「おせちは家で作るもの」ではなく「おせちは買うもの」と言う認識が広まっていきます。百貨店で人気なのは2万円台のものです。おせちを用意するのは手間がかかるとはいえ、決して安い買い物ではありません。なかには5万円以上のものもあり売り上げは好調です。
内容にも変化がでてきています。最近のトレンドは肉料理の入ったおせちです。新定番はローストビーフです。日持ちがするうえにソースを和風にすれば他の和の料理と調和もとれます。牛肉だけでなく、同じ調理法で作ったローストポークや、ロースト鴨も人気です。
それぞれの食材に込められた意味と、供物として重んじられてきた歴史からも、おせちが日本人にとって大切なものだということがお分りいただけたのではないでしょうか。日本の正月ではぜひおせちを楽しみ、三が日をのんびりと過ごしていただきたいと思います。